安きに流されている2011/01/15 23:48

ここ連日の稼働振りで体力を消耗したため、今日は体力を使わないソファ作りをしていました。といっても、半日は適当に無双やって過ごしていましたが。

ちゃぶ台作りについて少しお話します。チークにオイルフィニッシュをかけて仕上げる方法は、2004年から始めました。木材の質感を残したまま実用性のある美しい表面仕上げの方法はないものか、一時期さぐっていました。木製のPC器を作るために、器の外側を美しく見せたかったからです。様々な材料を試し、濃い茶色の家具のような質感が、チーク + オイルフィニッシュ(色: エボニー)で実現するとわかりました。

非常によい質感が得られるため、いろんなところに使ってきました。様々な木材に試し、仕上げ方法もいろいろ試しました。そしてひとつの方法が確立されていきました。ちゃぶ台も当初そのやり方にのっとって生産されていました。ところが今回、今までになく多くの数を作ることになり、従来の方法では手間がかかりすぎました。それでも仕方ないと思っていたのですが、さすがにきびしいため、方法そのものを見直すことになったのです。

オイルフィニッシュの説明に書いてあるやり方は、乾燥する前に#240~#400の耐水やすりをかけ、布でふき取って仕上げます。それに対して私の方法は、乾燥前に#800~#1000の耐水やすりをかけて、そのまま再度オイルフィニッシュをかける作業を4回繰り返し、最後はやすりをかけないで布でふき取る方法でした。説明にある通りのやり方だと光沢感がまったくない完全つや消しの仕上がりになってしまったからです。だから質感を上げるために別の方法を開発しました。

今回やるにあたっては、今までのやり方の無駄な部分を見つけ、単純化することにしました。まず、オイルフィニッシュは複数回かけても木材に吸収される成分は一度目のものがほぼすべてです。これは一回まで減らすことができるでしょう。その代わり光沢感がうまく得られなくなります。なぜ光沢がうまくでないのか、考え直しました。

オイルフィニッシュをかける前にやすりをかけておきますが、それは#180です。仕上げのときに#800では間が開きすぎています。最初のやすりを#240で、次に#320で下地を作ることにしました。
オイルフィニッシュをかけた後、ぬれたままやすりをかけるとありますが、やすりをかける前に軽く布でふき取ることにしました。そうしないとやすりが木の表面を滑ってしまい、やすりの効果がうまく上がらないと考えました。やすりは#400にします。木の表面をしっかりやすった後、布でさらにふき取ります。
この方法は正解でした。手間のかかる方法と同じ質感を一度のオイルフィニッシュで出すことができました。そのかわり、オイルフィニッシュがおちてしまうほどやすりをかけないこと、特に角の部分は気を使って作業しなくてはなりません。やすりをうまくかける技術がないと、削りすぎてもう一度やり直すハメになります。

何が言いたいかというと、長年やってきた方法がうまくいくとそれが最良の方法なのだと考えがちです。ところが、それがカンに頼ったやり方で作られてきたのなら、最良ではない可能性が大いにあるということでした。自分流オイルフィニッシュの方法を開発したときには、やすりの番号に対する感覚もしっかりしていなかったから、細かいやすりで仕上げることがいいことだと思っていました。でも木の自然な質感を残すならそんなに細かいやすりはいりません。やすりの効果を上げるために必要な、少しずつ番号を上げていくやり方にも反していました。
オイルフィニッシュ後のやすりの意味も深く考えてもいませんでした。何となく説明に書いてあるからやっていただけで、効果を上げるという考えを捨てていました。

量産にあたりムダを省かなければいけない、そこがカンに頼っていた技術を理論的に変えてくれました。いつしかオイルフィニッシュを4回かけることが「手間 = 付加価値」に変わっていて、手間に隠れた無駄を見えなくしていたのです。
やり方を確立していくのは大切だけど、柔軟に変えていくことを忘れていた自分に対して一番あせりというか、ダメだなと思ったのです。昨日友人内で話していて、過去の活動のことを思い出しました。同時に最近見えてきた負のループは、一部そのころから顔を出していたこともわかってきたのです。あの時は若かったしね・・・本当にそれだけなのか ? 何となく出来上がっていく固定観念の裏に、本質が潜んでいる可能性を見ようとする自分がいなくなってきているような気がしました。歳だからじゃないですな。安きに流されているんですよ。

ちぃとばかり反省しないといけませんね、いろいろと。