今があって未来は生まれる2010/03/01 00:50

前市長が病に倒れ、辞表を提出しての市長選、5人の候補者で激戦となりましたが、私も支持した佐渡市長が新市長に決定しました。やはり政策面で非常にしっかりしていたのと、前市長が始めた改革路線をそのまま引き継ぎ、さらに良い方向に進めていくという部分も大きかったと思います。

さて、地元の事情はそこに住む人でないとわかりませんが、今回の市長選ではいろいろ感じることがありました。新市長の掲げていたことは、広い面で通じる言葉に言い換えると、今あるものを大切にし、充実させ、そこから生まれてくる新しいものを大切にしようという考えです。 そのような考え方は、きっと多くの人の生き方にも共通するものがあるでしょう。私は、まさにそれによって生きているようなものです。私の昔話をちょっとしましょう。興味ある人だけ見てください。

私は病で、体の自由がききません。なので、定職もなければ日常生活でも多くの難儀を抱えています。昔からこうではありませんでした。今の病気になる前は、大学院博士課程前期で基礎研究を積み、博士課程後期で研究が一定段階まで進んだら、教授と共に起業するか研究所を設置して、世界のデジタル化された文化遺産を多くの研究者が自由に使え、共に研究し、発表できる情報基盤を作っていく予定でした。

私は文学部にいたので良くわかりますが、文学部は研究分野でデジタルデータをうまく活用しきれていません。その一方で博物館などの文化資産を抱える機関では、資産の長期保存や多目的利用を目標としたデータベース作りを進めています。しかし、それを誰がどうやって使うのかまでは考えられていないのが現状です。なぜなら、先のビジョンまで持って作らないからです。データベースがあればとりあえずいい、そんなところで止まっているのです。
文学部から大学院で情報通信工学の分野に移ってきた私は、この点に注目しました。電子情報を作る側と利用する側、双方の立場から今あるものを活かせる新しい情報基盤を整備すれば、互いに資産を活用できると考えたわけです。さらに、そこにゲームで培った遊び感覚や直感的な利用方法まで加えれば、多くのシーンで情報資産を生かしていくことが出来るでしょう。著作権の発生しない古典籍は、運用対象にぴったりでした。
この研究を大学院の枠を超えて多くの先生方が高く評価してくださり、別件でコンピューターゲームに関する知識と研究を評価してくれる先生もいて、大学院は非常にいい状態で進んでいました。しかし、それも病魔の兆しが見え始めたころからずれはじめ、研究はできなくなっていきました。時間だけが経過する中、ついに風邪が原因で病が表面化、同時期に進んでいた図書館での学術情報検索システムの研究も完成直前に頓挫、私は高く評価されつつも、なにひとつ社会的評価をなされぬまま研究の世界から身を引き、今は何もできず黙っているだけです。

文学部時代の私も多種多方面の知識と技術を高く評価されていましたが、その評価は決して「同じ線」からのものではありませんでした。つまり、文学部の人間がわかり得ないことをしているという、「違うものをみる」評価でした。みんなほめる、でも誰もわかってくれない、そんな状態でした。しかし、本当は文学部の人間は私を理解するべきでした。なぜか、それは私の研究が、文学部の行き着く20年、30年後の難題に立ち向かうための提案だったからです。誰もそんな未来は見ていません、それを見通せる知識を持っていませんでした、教授レベルであってもです。こちらは文学部でやることをこなす上で、さらに他の分野のこともやっていたのですから、知識の基盤が違います。それを全部関連付けて見る私に、文学部の人はついてきてくれませんでした。

卒業から数年後、大学に戻ってきて独立系大学院(下位組織に学部を持っていない)に入りました。普通、大学院は学部の延長上にあります。ところがこの独立系大学院というのは、学部を持っていないため、いろんな学部の出身者を集めて構成されるという特徴があり、人材の色が豊かになるのです。
(注. これは早稲田大学内部での用語だと思われ、一般的ではない。早稲田の文学部の場合、文学研究科という大学院があるが、私は学部学生のときですらなじめなかったので、大学院は同じ早稲田でも別のことができるところを選んだ。なお、私が入った国際情報通信研究科は内部がさらに分かれており、文系学部出身者で工学系に進む人はまれである。多くの文系学部出身者は情報社会科学に進む。多彩な出身が集まるとはいえ、基礎知識を持たねば専門性の高い大学院の授業は受けられず、文理の壁を超えるものは少ないのが現実である。)
いろんな分野からの出身者を歓迎するというだけあって、私のやってきたことが初めて本当の意味で評価されだしました。ひとつの分野からでは決して見えないことをやっている人間を、歓迎してくれる世界があったのです。
学生として私の研究姿勢は、今まであることを結びつけながら、新しいものを生んでいくことでした。ひとつの分野から見えない世界を別の世界からのぞき、互いを近づけていく、そこにはひとつではできなかった多くのことがあります。未来は今あるものから生まれる、それを信じていたのです。

病気でやれることが限られている今も、私は変わりません。今あるものを大切にしています。今あるものは何でしょう、私は多くのものを失ってしまいました。でも、自分という心は生きています。学問の世界のことだけが私ではありません。趣味に興じたり、ちょっとしたときに感じること、つらいこともたくさんあるけれど、過去があるから今があり、社会的な立場は失っても、自分の中に残したものは残ります。ちょっとしたことを大切にしながら、自分ができる範囲内のことをこなしつつ、そこから見えてきたものを充実させていく、それは私自身の力になるものです。
今あるものを大切にしないと、次がないのです。私はプラモが好きです。ひいて造形が好きです。好きだから、知識や技術を増やそうとします。そうしているうちに自分自身が充実し、そこに引き寄せられた新たな人の輪が広がり、知識や経験を使ってこんなblogも作っています。

今あるものを大切にし、そこから生まれてくるものを充実させていく、ふとしたところでつながっていました。病気の私がこれからどうなっていくかわからない、だからこうして、大事にしてきたやり方をしっかりこなしています。次なんてあるのか、意味はあるのか、効果はあるのか・・・今ここにそんなつまらない理屈はいりません。自分を信じ、次を意識している限り、私は生きています。だったらそれでいい、いろんなところで、いろんなものがつながって、未来が生まれていく、私はそれを信じて生きてます。

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私の目指すのは、自分の考えたことを「なぜ」「なにが」としっかり整理して、いろんな考え方があることを人に理解してもらいたいことです。それにはやっぱり適当な書き方では伝わらないだろうし、ただおもしろおかしくでもいけないと思います。お遊びのときはお遊びですが、まじめなときはまじめです。
なので、かるーく読みながら、ふーん、そうなのかと納得していただけるとうれしいですね。本当は、他の人はこういうときどんなことを考えるのかな~って知りたいときもありますけど、返ってくることは期待していません。同じくらいの土俵でコメントできないのでしないと思われていることはよくわかってます。まあ、近づきがたい空気さえなごめばいいんですが。

コメント

_ 「そ」 ― 2010/03/01 20:39

 ははぁ文学系の人だったのね、妙に理論武装してると思ったら。

病気の事はなんとなく聞いてましたが今でも完全には理解できていませんから。「言いたくない事は言いたくなるまで待つ」、「言った言葉には応える」がモットーなんで、ぶっちゃけもっと発言(アピール)が欲しいですね!
bYペリーヌの抱き枕が順番制でまったく届かないことに憤慨の「そ」でした。

_ きしもとまさき ― 2010/03/01 23:26

私が文学系といわれたのは初めてです。文学部なんてかりそめの姿に過ぎないんで。自分でも文学部出身であることを全面に出すことはないのですよ。あそこの考え方は私にはまったく合いません。というか、文学部扱いされると屈辱って感じですか。昔から付き合いある人でないとわからないんですが、私がどうして文学部にいたのかまったく理解されていませんね。あまりにも方向性が違いすぎて。自分でも文学部のやり方についていけず、高校時代から進めていた人工知能の研究をし続けていたことが結果的に大学院で本来の姿に戻った感じですか。んま、学問縦断する人間に、文系とか理系とか、まったく関係ないんですけどね。そんな入試の枠組みにしばられているの日本人くらいだからなー。ちなみに大学入試の時には並行して薬学部も受かっている人間であります。

え、私の病については知ってもらって得もないので、まーず黙っているでしょう。それがどんなもので、どんな風になるのかは、実物を見るか知っているかしないと意味を成さんのですよ。だから黙ってます。そんだけ想像を絶するものなのかな~。

抱き枕は知りません。一度に買いすぎただけでしょう。

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