ワンフェス報告 GK部門 P12010/02/15 23:54

GKとは Garage Kit の略で、ガレキとも言われます。定義の範囲はどこまで言うのかわかりませんが、常温で反応して固化するレジンを使った組み立て式キットと言うのが妥当かもしれません。プラモはプラでできているからプラモなので、プラモはGKに入りません。

GKもプラモも同じ組み立て式キットですが、プラモは製造に専用機械や金型が必要になるのに対し、GKはシリコンで型を作り、そこに二液性レジンを流し込んで固化させるので、ちょっとした知識と道具があれば誰にでも作れるのが特徴です。そういう理由から、少数生産を基本とする立体物製作に利用されています。

ワンフェスは、この個人製作のGKや会社で製作したGKを売るのが目的で始まったイベントで、現在はトイ、ドール、その他アクセサリーや金物、彫刻なども扱われ、立体物のフリマといった形に進化しています。もちろん、GKが大きな割合を占めることは言うまでもありません。

ワンフェスで個人製作の立体を売るとき、それが二次著作物に当たる場合は、当日版権申請もしくは独自版権取得を行わなければなりません。
周知の通り、他者が版権を持つものを無断で製作して販売することは犯罪になります。同人誌も法的には黒ですが、それを黒としないのが日本のよいところ、つまり、創造文化を維持することが知的産業への発展につながることを知っているマンガ・アニメ・ゲーム業界が暗黙的もしくは公然にOKをしているから成り立っているのです。
しかし、立体は勝手に作れません。その代わり、自分で版権元と交渉して版権を得るか、当日版権という、その日一日は版権元から許可が下りて自由に販売できる手続きを踏めば販売できます。つまり、当日のみとはいえ、版権が下りることは、それが版権元が認めた公式の製品となるわけです。当然、タダではいきません。製作物を写真審査してもらい、OKが出たら製造数に応じて対価を数%払うことになります。なお、武装神姫のように、対価0%というものもあります。

だから、コミケなどの同人イベントと異なり、責任を持って創作し、販売することが求められます。仮に当日までに製品ができなかったとしても、サンプルを提出(通常は写真)することは必須で、何にせよ許可が下りた製品については必ず製作しなければなりません。「新作おちました」なんてことはありえないのです。「版権おりませんでした」はありえますが、おりた以上は、責任の大きいものとなります。

会場では多種多様な人たちがGKを作り、販売しています。ここ数年のうちに広がったPVC完成品により、フィギュアという立体物は一般化したものの、一方で立体物に対する理解は思いのほか進んでいないようです。この数回のワンフェスでは、企業がそこで限定販売するPVC完成品に群れができ、それを買ったら帰ってしまう人達が現れました。作る楽しみを共有できるイベントにそれはないだろうと思って見ていたのですが、幕張に移動してからは企業も自粛したようで、すぐに帰ってしまう人はかなり減りました。

PVC完成品市場は、現在売れるものと売れないものの売れ行き差が激しいことで有名で、業界では問題にもなりつつあります。立体として完成度の高いものを求める人より、フィギュアをグッズの延長として買っている人が多いことの反面が噴出しているようです。そのため業界では全体の生産数を減らし、リスク回避の傾向に入り、市場縮小が危惧されているのです。

実際の会場で見られた傾向は、新しくフィギュアに興味を持ち自分でも作ってみたが、興味のあるキャラを作って満足している人達と、造形の趣旨をとらえ、様々なものに挑戦する人達の二派が大きく開いてきている印象を受けました。ワンフェスに私が初めて行ったのは2007年冬ですが、このころは並ぶことなく入場でき、会場の空気もプロ意識の高い張り詰めたものがありました。それが明らかに数年でぬるくなっています。

当時は完成品PVC市場が発達期で、今ほど種類も数もありませんでした。今は何でもすぐ立体化されますが、そういうこともありませんでした。やはり市場の変化は大きいでしょう。

立体製作はものすごく難しいものと考えている方がいるかもしれません。しかし、それはウソです。少なくともデッサンについては、絵を描くより立体の方がはるかに楽です。昨今はフィギュア製作の本も出ておりますし、練習をすれば誰でも作れるようになります。でも、自分の好きなキャラを立体化してみたい、それだけで立体を作るならば、自己満足のいくところで終わってしまうでしょう。立体にはそれを見定めるための目と知識が必要であり、そこを磨いて初めていい立体が作れるようになります。そのステップに進めなければ、作る楽しさを理解できないでしょう。

私はかつて上野の国立博物館に、友人と仏像展を見に行ったことがあります。目的は仏像の何たるかを知ることもありましたが、友人を立体の良さに目覚めさせる目的もありました。仏像がどうやって作られるのか、練習で作られたもの、国宝、民間での簡単な利用目的で作られたもの、はやり国宝に選ばれるものは、歴史的にも美術的にも優れたものだと震撼しました。立体を見る目では、仏像もフィギュアです。仏という決まったテーマでいかに作るのか、多くのものを学べました。

立体が好きな人は、仏像にも興味がわきます。でも、キャラが好きで立体を作った人には、仏像など関係ないと思うかもしれません。しかし、日本で代々作られてきたフィギュア、仏像は、今でも多くのものを語りかけてくれます。立体の何たるかに興味を持てるか、ここで出来上がるものに大きな違いが出ます。

考えられて作られているものは、まずデッサンが正確です。顔もしっかり作られ、手の表情も豊かです。いろんな角度から見ても情報を均等にし、作り手の個性が見えます。メカでも同じです。いや、むしろメカは難しいですし、プラモも多く出ていますので、作りたい人だけが作るメカは質の高い傾向にありました。

キャラ愛に走っているものは、うまい表現よりも自分の好きな部分に固執しています。デッサン云々より、その格好をしていればいいというのがあふれています。自分の好きなキャラが、自分の好きなポーズをしていれば、それで終わっています。えてして塗装も非常に雑です。

GK製作への入り口は、昔よりもずっと広くなりました。しかし、版権を取って公式物として売ることは、単にキャラ愛で作ってグッズの延長気分で売ることとは責任の重さが違います。それを自覚していない人が目につくようになってきたのは危うさを感じます。もちろん、新しく入ってきた人達にも意識の高い人達はたくさんいました。この辺は、時間で淘汰されていくのかもしれません。立体製作にかかる手間はあまりに膨大であり、本当に好きでないとやっていけないでしょう。

長くなったので続きは次回です。

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