観察しよう2010/08/19 23:43

工場長が戻るまでにいろはを少しでも見られる形にしないといけないんで、いろはをこそこそやりつつアッシュ。アッシュはトレフェスから出展のため、こちらは本申請が9月16日。おーい、時間がすんごい押してるぞ、大丈夫なのか ? いろはは容量的に結構あるため、とにかく最初にぱぁっと作らないとかーなりやばそうよ。
いろはは体をおおまかに作って、盛りの最中です。これだけではまだよくわかりませんが、大きさはこんなもん。独特の短い胴体をデッサンとして考慮しつつ、脚のおにくは多めに。一度にやりすぎると乾燥しないため、やれる量が限られます。しかし。胴体を急がないと、服の袖やらいろいろありますんで、ここで時間をとられすぎるわけにはいきません。
昨日の KOF XIII の影響を受けて、アッシュの顔を若干変更。戦闘前の会話シーンの絵のように、唇を大きくして、目を細く、しかし開けている目の広さは拡張。陰気臭い印象がだいぶ和らいだのですが、写真だとあんまわからないかも・・・。前髪の量が多すぎるので、これも少しずつ減らしていきます。

作業終わったら夜の11時過ぎてました。と、ここで終わると情けないので、最近やっとわかってきたことをひとつ紹介します。

作るキャラクターにはどんな特徴があるのか、具体的にひとつずつつかむことが、非常に重要です。客観的特徴を見抜き、それを路線として掲げると、目指すものがはっきりしてくるほか、見せ方もいろいろ変わってきます。

いろはですが、まずは童顔、胸がでかい、胴が短く、骨盤の位置が高いため、おしりが大きくなる。ももが外側に対しても太く、内側は股に近いところほど肉が厚めについている。ひざ下は細く、長さはももの方が長い。肩幅は狭く、顔はやわらかく丸め。性格は「戦う鶴の恩返し」だから、ひたむきでまっすぐだけど、強さを見せる。顔は性格を考慮する。
これがまぎれもない「いろはっぽい」部分です。特徴をこうしてわかりやすく客観的に捉えておけば、そこに多少の個性が入ってもいろはになるでしょう。キュアパインを作ったとき、イメージは「のびきってない弱そうな感じ」だけで、他の特徴をしっかりつかんでいませんでした。なので、残りを自分の味付けにしてしまったのですが、結果的には、総合バランスはいいものの、ちょっと感じの違うプリキュアができあがってしまいました。

ここでも紹介していますが、ポケモン画などを本物と近い感じで描くとき、冷静に考えると同じことをしていました。しかし、絵は立体と違ってけっこう量産されますから、量産しているうちに特徴を特別意識しなくても描けるようになってきます。慣れとは恐ろしいものです。何となくそれっぽくできちゃうという感覚でいると、いざまた別の分野に入ったとき、同じ感覚でいてしまうんですね。ところが、立体は平面より情報が多く、しっかり特徴をかためてやらないと、感覚で何となくは間違いなくずれます。

特徴をつかめば、いろははただの「むっちりぽよぽよ」ではなく、どこがどれだけ現実離れしていて、どこは現実的なのか、とわかってきますので、作るときにそれを意識すればいいのです。客観的になるには、対象から一歩距離をおくことと、普段からの観察眼が必要です。でもこれは何も、立体に限ったことではありませんよね。社会を観察するときも、英単語を覚えるときも、冷静に考えれば同じことをしています。

これは他ならない、「知る」「理解する」という行為です。キャラを知って作る、あたりまえがゆえに、見落としがちで、より深く理解するためには、より大きな観察眼が必要です。そのためには学習が必要です。そう、つまりは造形ひとつとっても、学ぶことはたくさんあるということです。そしてまた、知識は次々と応用をきかせ広がっていくものでしょう。なにごとも作って続けることの価値、大切ですね。

ワンフェス報告 GK部門 P22010/02/16 01:25

ワンフェス報告、GK部門の続きです。読んでいる人はいるのかわかりませんが、こういう部分をしっかり固めるのがここのblogなものでして、最近は脱力してばかりでしたから、まじめに書いてます。
ところで、私ってかたいイメージあります ? 自分で見て考えたことをうまく相手に伝えようと思っているだけなんですが、理論武装していかないとうかつにコメも出せない空気でいっぱいのようです。でも、普段の会話もこんな感じなので、どうしようもできません。別に感想を求めているのではなく、こういった世界を他の人に知ってもらうことに意義を感じています。こんな趣味の話でもいろんな世界に通じる道があって、「オタの世界」と言い切られておしまいよりずっといいと思っています。

さて、GKを売る人のことを一般的にはディーラーと言いますが、作るだけがディーラーの仕事ではありません。売るのもディーラーの仕事です。ワンフェスは、自分のところで完売してしまっても帰ってはいけないルールがあります。それは、どんなものを売っていたのか、展示見本を残しておくという、展示会の側面を持っているからです。

ディーラーは売るために様々な工夫をします。千差万別ですが、共通している項目があります。まずは見る相手の目の高さにあわせて展示することです。
参加者は通路を立って歩きますが、ディーラーは机にものを展示しています。よく見てもらうには、やはり歩きながら見られる高さにおく必要があります。同人誌なんかはそんなことしません、なぜでしょう。本は表紙を見ればいいので、机に並べてOKです。しかし立体物は全体を見てもらう必要があります。だから、相手が全体を見られる高さに置くのが基本となります。
当然ながら見やすい位置に置くことも大切です。目の高さにあっても、商品が展示BOXの奥にあったら気付いてもらえません、それと同じで、展示物に目が行くように工夫します。

スペースの高さが生かせるイベントですので、展示物にぴったりな演出、光を当ててみることなども大きな要素です。なんにしろ、目を引く工夫をしないと、どんなにいいものを作っても売れません。また、ディーラーが死体になっていてもいけません。前日までレジンで複製していたとかで疲れきり、ディーラーが半分死んでいるようなところでは買うのに声すらかけられませんからね。

作って売るところまでしっかりするのがこのイベントです。それもそのはず、二次創作物の場合、版権元に支払う金額は当日版権申請した販売数にかかってきます。実際に売った数にかかるわけではありません。販売するために生産した数に対してかかってきますから、売れ残りはマイナス計算となります。また当日版権ですと、当日でしか売れません。在庫を抱えるより、値下げしてでも全部売り切ったほうが勝ちです。決して安値で作れないGK、工夫に工夫を重ねる必要があります。

各ディーラーがどんな工夫をしているのか、見るのもひとつの楽しみでした。

GKのことをもっと深く考えてみましょう。GKはふたつの立場があります。原型を作る側と、キットを組み立てる側です。ディーラーは普通、展示見本としてひとつ塗装したものを展示しておきます。どんなにうまく作っても、塗装で失敗すればそれを生かせません。
私は、GKを組み立てることの本質は、塗装にあると考えています。Hobby Japan でカラーレジンを使い、塗装なしで簡単に組み立てられるキットを誌上通販しています。私はこれについて、あまりいい感じを持っていません。なぜなら、それがあまりにも理想だけで作られているからです。

そのGKを作った人は、そのキットを「初心者を越えて入門者向け」としています。そして、組み立てる楽しみを覚えた人がGKの魅力に目覚めてくれることを期待しているそうです。うんざりしました、こういうのを頭でっかちとか、理屈で話をすると言うんですね。

まあ、確かにそうやって目覚める人もいるでしょう。でも現実は、「なんで完成品売らないの ?」「結局面倒なだけだった」「それでもGKはハードル高いよね」で終わるでしょう。そもそも立体製作に興味を持つような人は、こんな入門者向けのものに目を向けず、何かしら興味を持ったものに飛び込んでいきますよ。私がそうでしたからね。だから、入門者向けのものを作っても、入門して終わりでしょう。

今出回っている多くのGKは塗装が必要です。そしてモデラーとしての入り口は、エアブラシを買うことから始まります。それがないと塗装表現に限界があるからです。だから、入門キットで入門した人も、最後はエアブラシに2万円ほど投資し、その後塗料にも数千~万単位で投資する門をくぐれるかなのです。つまり、GKで入門とか初心者とか言うのは間違いで、そもそもGKとは上級者向けなのです。入門してもエアブラシを買わなければ永遠に入門どまりですから。

プラモにしてもGKにしても、組み立てて塗装して初めて完成します。生み出す側は、まずどうすれば立体として完成度が高くなるかを考えて作ります。組み立てる側は、その立体を見栄えよくなるよう仕上げるのです。GKはあまり改造しませんので、GKを組み立てることは塗装することに等しいです。
GKはこの生みと完成の面が非常にはっきりしていて、必要な技術が違います。塗装しながら感じる作り手の思いを大切にするのもまたGKの楽しみ方です。

GK部門の報告、次はどんなものを買ってきたかと、私の作っている原型を少し紹介しましょう。

ワンフェス報告 GK部門 P12010/02/15 23:54

GKとは Garage Kit の略で、ガレキとも言われます。定義の範囲はどこまで言うのかわかりませんが、常温で反応して固化するレジンを使った組み立て式キットと言うのが妥当かもしれません。プラモはプラでできているからプラモなので、プラモはGKに入りません。

GKもプラモも同じ組み立て式キットですが、プラモは製造に専用機械や金型が必要になるのに対し、GKはシリコンで型を作り、そこに二液性レジンを流し込んで固化させるので、ちょっとした知識と道具があれば誰にでも作れるのが特徴です。そういう理由から、少数生産を基本とする立体物製作に利用されています。

ワンフェスは、この個人製作のGKや会社で製作したGKを売るのが目的で始まったイベントで、現在はトイ、ドール、その他アクセサリーや金物、彫刻なども扱われ、立体物のフリマといった形に進化しています。もちろん、GKが大きな割合を占めることは言うまでもありません。

ワンフェスで個人製作の立体を売るとき、それが二次著作物に当たる場合は、当日版権申請もしくは独自版権取得を行わなければなりません。
周知の通り、他者が版権を持つものを無断で製作して販売することは犯罪になります。同人誌も法的には黒ですが、それを黒としないのが日本のよいところ、つまり、創造文化を維持することが知的産業への発展につながることを知っているマンガ・アニメ・ゲーム業界が暗黙的もしくは公然にOKをしているから成り立っているのです。
しかし、立体は勝手に作れません。その代わり、自分で版権元と交渉して版権を得るか、当日版権という、その日一日は版権元から許可が下りて自由に販売できる手続きを踏めば販売できます。つまり、当日のみとはいえ、版権が下りることは、それが版権元が認めた公式の製品となるわけです。当然、タダではいきません。製作物を写真審査してもらい、OKが出たら製造数に応じて対価を数%払うことになります。なお、武装神姫のように、対価0%というものもあります。

だから、コミケなどの同人イベントと異なり、責任を持って創作し、販売することが求められます。仮に当日までに製品ができなかったとしても、サンプルを提出(通常は写真)することは必須で、何にせよ許可が下りた製品については必ず製作しなければなりません。「新作おちました」なんてことはありえないのです。「版権おりませんでした」はありえますが、おりた以上は、責任の大きいものとなります。

会場では多種多様な人たちがGKを作り、販売しています。ここ数年のうちに広がったPVC完成品により、フィギュアという立体物は一般化したものの、一方で立体物に対する理解は思いのほか進んでいないようです。この数回のワンフェスでは、企業がそこで限定販売するPVC完成品に群れができ、それを買ったら帰ってしまう人達が現れました。作る楽しみを共有できるイベントにそれはないだろうと思って見ていたのですが、幕張に移動してからは企業も自粛したようで、すぐに帰ってしまう人はかなり減りました。

PVC完成品市場は、現在売れるものと売れないものの売れ行き差が激しいことで有名で、業界では問題にもなりつつあります。立体として完成度の高いものを求める人より、フィギュアをグッズの延長として買っている人が多いことの反面が噴出しているようです。そのため業界では全体の生産数を減らし、リスク回避の傾向に入り、市場縮小が危惧されているのです。

実際の会場で見られた傾向は、新しくフィギュアに興味を持ち自分でも作ってみたが、興味のあるキャラを作って満足している人達と、造形の趣旨をとらえ、様々なものに挑戦する人達の二派が大きく開いてきている印象を受けました。ワンフェスに私が初めて行ったのは2007年冬ですが、このころは並ぶことなく入場でき、会場の空気もプロ意識の高い張り詰めたものがありました。それが明らかに数年でぬるくなっています。

当時は完成品PVC市場が発達期で、今ほど種類も数もありませんでした。今は何でもすぐ立体化されますが、そういうこともありませんでした。やはり市場の変化は大きいでしょう。

立体製作はものすごく難しいものと考えている方がいるかもしれません。しかし、それはウソです。少なくともデッサンについては、絵を描くより立体の方がはるかに楽です。昨今はフィギュア製作の本も出ておりますし、練習をすれば誰でも作れるようになります。でも、自分の好きなキャラを立体化してみたい、それだけで立体を作るならば、自己満足のいくところで終わってしまうでしょう。立体にはそれを見定めるための目と知識が必要であり、そこを磨いて初めていい立体が作れるようになります。そのステップに進めなければ、作る楽しさを理解できないでしょう。

私はかつて上野の国立博物館に、友人と仏像展を見に行ったことがあります。目的は仏像の何たるかを知ることもありましたが、友人を立体の良さに目覚めさせる目的もありました。仏像がどうやって作られるのか、練習で作られたもの、国宝、民間での簡単な利用目的で作られたもの、はやり国宝に選ばれるものは、歴史的にも美術的にも優れたものだと震撼しました。立体を見る目では、仏像もフィギュアです。仏という決まったテーマでいかに作るのか、多くのものを学べました。

立体が好きな人は、仏像にも興味がわきます。でも、キャラが好きで立体を作った人には、仏像など関係ないと思うかもしれません。しかし、日本で代々作られてきたフィギュア、仏像は、今でも多くのものを語りかけてくれます。立体の何たるかに興味を持てるか、ここで出来上がるものに大きな違いが出ます。

考えられて作られているものは、まずデッサンが正確です。顔もしっかり作られ、手の表情も豊かです。いろんな角度から見ても情報を均等にし、作り手の個性が見えます。メカでも同じです。いや、むしろメカは難しいですし、プラモも多く出ていますので、作りたい人だけが作るメカは質の高い傾向にありました。

キャラ愛に走っているものは、うまい表現よりも自分の好きな部分に固執しています。デッサン云々より、その格好をしていればいいというのがあふれています。自分の好きなキャラが、自分の好きなポーズをしていれば、それで終わっています。えてして塗装も非常に雑です。

GK製作への入り口は、昔よりもずっと広くなりました。しかし、版権を取って公式物として売ることは、単にキャラ愛で作ってグッズの延長気分で売ることとは責任の重さが違います。それを自覚していない人が目につくようになってきたのは危うさを感じます。もちろん、新しく入ってきた人達にも意識の高い人達はたくさんいました。この辺は、時間で淘汰されていくのかもしれません。立体製作にかかる手間はあまりに膨大であり、本当に好きでないとやっていけないでしょう。

長くなったので続きは次回です。

これが造形だよ !2009/12/01 18:15

いよいよ師走です。どういうわけなんだか、最近神経が異常に高ぶる現象に襲われておりまして、一日一時間の睡眠でおかしなことになっております。眠くならない・・・明らかにコレはおかしい・・・。まぁ、いいや。

久しぶりに震える造形を見ましたよ。初出は2009WF夏ということですが、こまめに見たのに気付かなかったなぁ。どうしても全部は細かく見切れないですからね・・・。
放課後プレイ 彼女 完成品フィギュア[コトブキヤ]《予約商品3月発売》
オイオイ、うそだろ、うそだと言ってくれ !
この異様な風貌といびつなデッサンのものが、これだけの圧倒的存在感で作られているのですよ。原作はよく知らないので、これを見てから調べてみたら、なるほど納得。二次元でしかあり得ないだろうこの形を実に見事に表現している個性的な作品です。
とりあえず他の角度からも見てくだされ。
あからさまに人間離れしたデッサンの特徴である細さを強調するために、脚にめりはりをつけて、ひとつの形として見せられるところがまず素晴らしいです。そして大きく、どの角度からでも情報が均一になるよう計算されて作られた髪の造形、同時にそれが異様さも演出しており、ここには間違いなく空気があります。

しかしこれだけ二次元的デッサンのものを三次元にしているだけあって、若干のブレがあります。だた、それはもはや二次元と三次元の違いでもありますから、許容範囲内に十分あるでしょう。ブレというのはこういうことなんですが・・・
顔をこちらから見て右側で見た場合と、左側で見た場合とでは表情の印象が違います。左から見た場合の方が顔の表情は安定しています。角度を付けるほど違いは顕著です。
同上左から見た場合の方が表情が豊かです。理由は顔の見える面積もあるのですが、それ以上に白目の面積が大きく影響しています。目は表情にとって命ですが、白目があると表情がはっきり出ます。白目の原理は某Disneyというところがネズミーマウスにある時期から白目を加えた話が有名ですね。
これが造形の造形たる所以、見る角度によって表情は変化するのです。このフィギュアは角度で極端に顔の情報が減ってしまうのがつらいところですが、表情が生きるときには髪の広がりが少なく見え、表情が死ぬときには髪が映えるようにしてあり、全体としての情報量は均一に保たれています。でも、顔で情報量がコントロールされるともったいない印象です。まあ、それは本当に限界だと思うので、よく考えられていると感心させられます。
この通り、このフィギュアは若干下から眺められた方が顔の映えはずっとよくなりますねぇ。立ち姿勢で下から見た方が顔が良くなるというのはレアじゃないでしょうか。小顔ゆえという感じですが、実によくできています。
え ? もう少し首をひいて顔を上げた方が良かったんじゃと言いたいのかって ? まあ、つまりそういうことなんですが。印象が崩れない範囲内でね。

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