ラブハドフは地獄だった2019/06/08 22:00

Twitter上でまことしやかに流れてくる情報、それは、MCU作詞作曲の「ラブハドフ」という、HARD OFFの隠れテーマ曲CDが、限られた店舗にて販売されることでした。私にはどちらかというとMC8bitという印象の強いMCU氏ですが、とても好きなので買いにくことにしていました。今回はたまたまHARD OFF四街道店でも販売で、私も四街道にいたために、買いに行くチャンスができました。うわさによると、店ごと10枚しかないらしいので、発売日である今日行くしかないのです。
しかし運悪く、今日に限って左半身の硬直が発生しました。硬直はいつも背中の筋肉が起こすパターンが多いながら、左半身がうまく動かなくなる最悪パターンです。どうなるかというと、かろうじて動かせるが、ある角度以上は曲がらない、指は動くが腕は動かない、当然細かい作業などは不可能で、右手も思うように言うことをきかない状態でした。
脚はひきずれば動けます。ただ、自分の意思でひざを曲げることができなくなり、外見上は足が痛い人みたいな感じです。車の運転はできませんので、親に乗せて行ってもらい、CDを買うだけなら何とかなると思っていました。歩くより、車の乗り降りの方が厳しかったかも。左脚が曲げられなくなり、力も入らないからです。意気込んでHARD OFFまで連れて行ってもらいました。
店にはポスターも何もなく、一応、ジャンク売り場で売ることは知っていましたが、MCU氏のTwitterでも見ていない限り、CDの存在はわからないでしょう。とりあえず店員に聞きました。え、この店のどこかに隠してあるから探せ ?? 困りました。てっきり、ちゃんとコーナーがあるか、レジで直接買えるのかと思っていたからこの体でやってきたので、企画としては面白いけど、探せと言われても正直・・・地獄だな。
6枚はまだあるそうで、仕方なく親と一緒に探しました。私は左脚を引きずっていたから、何かけがでもしている程度に見えたかもしれません。まさか左半身が自由に動かせないとは思うまい。
目立つところを探しても見つからず、店員にヒントを聞きました。本当のところ、この体で探すのは難しいので、情報をつかんだ上で来ているのだから、何とかしてくれないかと言いたいところでした。でも、こんなところで自分の不健康を武器のように使っていいんでしょうか。それとも、体が悪いなら買うのはあきらめてと言われてしまうのでしょうか。硬直が出ていなければ、私も問題なく探せます。ただ、枚数が10枚しかない上に、販売店舗も限られ、今日を逃せば買えない可能性が高いです。普段硬直が出れば、家から出ることはしません。でもね、探すことになるとは思わなかったから手伝ってもらって出てきて、この状況は・・・。これで私が車いすにでも乗ってくれば、店員も譲歩してくれたかもしれません。ところが、一見すれば左半身の自由がきかないことはわかりません。
売り場のどこのものが売れたかはわからないけれど、CD売り場には隠したらしいので、結局そこを探すとありました。並んでいるCDなら片手で物色できるため、発見難易度は高いながら、そこを探すしかなかったのです。まぁ、探して三枚目がいきなりそれだったから、運がよかったのでした。

一見するとよくわからない不自由というのは、別に相手が悪いわけではないのですが、結構苦労します。説明しないと相手もわからないし、でもこういうシーンで説明してよいものか、困ることは多々あります。探すことになるとは知らなくて、左半身不自由で動くのが大変だから、何とかしてくださいと言われたら、店員はどうするでしょう。
私が店員の立場なら、CDを持ってきます。Twitterで告知を知って買いに来た時点で、ただ店に来ただけでは知りえないことを知っており、14時過ぎの段階で6枚残っているのだから、不自由を押して来ている分だけ譲歩します。それ以上相手に酷を強いるより、譲歩した方が店のイメージもいいでしょう。
しかし店員によっては違う判断をするかもわからず。探す原則を押し通すかもしれません。でも、体が不自由なら買いに来るなというのも変ですよね。世の中にはこうして、見えない病気や不自由への壁が多々あるのです。左半身が不自由なんですよと、言い方も気を付けないと、不自由を盾に優遇しろと言っているようにも聞こえます。こういう場合は優遇してもらってもいいとは思いますが、説明するのも面倒といえば面倒です。相手にわかってもらえる前提がないのですから。
わかりにくい病気や障害で、健康な人には簡単なことができない人がいることに対して、世の中はどこまで寛容でしょうか。それは人によって違うだろうし、状況にもよります。でも今の段階では、障がい者未満の人への風当たりは厳しいと思います。
社会生活が困難になる病気は世の中たくさんあるわけですが、病気になったら最後、社会から分断されてしまうことは、案外誰にでも起こりうる普通の恐怖なのです。それがなぜ問題にならないかは、病気になった人に発信力がなくなり、知られざる存在になるからです。どうしようもできない病気になって初めてわかる、ではいかんのですよ。人間社会とは、そういうリスクを背負ってできているわけです。誰も病気になりたくてなるのではなく、知らないうちになってしまうものです。でも、一度病気になったらその先は闇では、そんな恐ろしいものはないでしょう。ところが現実は闇なんだ。ま、闇になってはいけないから、こうして言うのでした。

HARD OFFでのこの体験は、何かやるせなさを覚えました。素直に全部言って、どうなるかわからない、このやるせなさね。