コミケ戦士の鑑2016/08/15 23:32

二日間の連続コミケ稼動により、今日はかなりまいっております。やっぱり三日目に行けたのは、緊張の途切れがなかったせいなんでしょう。途切れたとたんに疲れですよ。今日はおとなしくコミケのカタログを読みながら、時折プラモに工作を施して過ごしました。さて、そんな野暮な生活の話をしても面白くありませんので、コミケ二日目、私の今回のコミケ参加最大の目的であった、せいりゅ先輩との話をしようかと思います。
私のコミケ参加は、Cabez Factory 時代とBK保存委員会時代、単独参加時代の三世代に分かれます。BK保存委員会は現在まで活動を続けていますが、単独参加、要は絵師としてひとりで参加していたものは活動を停止し、Pixivが現在の活動の場です。そのBK保存委員会として活動を始めたのは、ちょうど大学も卒業が近いころでした。活動開始数年前から、A先生とのベア・ナックルIIの歴史は始まっていました。二人でこのゲームを愛し、ひたすらやっていました。私はそこで、ここまでBKIIを愛して止まないなら、コミケでこの思いを全力発散し、他の人にベアの魅力をわかってもらうべく活動すべきだと考えたのです。ひそかにコミケの申込書を買っておいて、ベアで参加するから一緒にやろうと、事後承諾でA先生を説得して活動することにしました。
最初の目標がコミケで攻略用の映像を作ることでした。ぎりぎりまで苦労しましたが、4キャラいるうちの、AxelとBlazeの攻略がまず完成し、コミケで出すことになりました。そして参加した最初のコミケで隣になったサークルさんが、せいりゅ先輩のやっているStand Up さんでした。初めて会ったのに、その場ですっかり意気投合し、互いの販売物を宣伝したり、売れると共に喜びました。思えば、こういう風にお隣さんとなるのも珍しいことでした。仲良くなったので、互いの頒布物の交換もしました。その本は、最初A先生が読み、その後、当時ゲームの研究という方向に傾きつつあった私が保存することになりました。
Stand Up さんはセガのSG-1000とSC-3000のソフトレビューをしているせいりゅ先輩のサークルさんです。しかし、その当時の我々には、そうした活動の深い意味までは知りえていませんでした。BK保存委員会はレトロゲーム攻略サークルというジャンルに当たるのですが、自分たちはただBKIIが好きだったというだけで、それがレトロであることや、そのジャンルで他の人が様々活動していることをコミケ当日知ったようなもので、入り口に立ったばかりだったのです。
BK保存委員会がやるべき攻略はまだ残されていて、それには一年かかると見込んで準備し、次の年の夏コミに再び参加します。Stand Up さんも来ていて、隣にはなりませんでしたが、挨拶してお話しました。そしてこのコミケで、Game Legend というOnlyイベントがあるので、そちらに参加してみないかと、Game Legend主催であるZEDさんから直接誘いを受けました。それにはレトロゲー攻略というジャンルに対するコミケ実行委員会の規制がかなりあったからです。コミケは規制が多くて活動がしにくいけれど、Game Legendはこのジャンルの拡大化の流れを受け、そのジャンルが活動しやすいようなルールで運営されるということでした。その年、BK保存委員会はGame Legend に初参加します。Game Legend もまだ三回目という、若いイベントでした。
こうしてBK保存委員会はレトロゲージャンルの中に取り込まれていきますが、攻略やソフトレビューなど、活動の仕方も様々あることを理解していき、Stand Up さんのようなサークル活動の方向性も理解できてきました。また、私の世代はファミコンで育った世代でしたので、ファミコンが当たり前であり、家庭用やアーケードゲームの歴史を詳しく知らず、この世にどんなハードが出て、どんなソフトがあったのか、知識や経験が足りなかったのですが、レトロゲーというくくりの中で、ゲームの歴史の流れに自分を置いて俯瞰することを学びました。SG-1000のことも、Stand Up さんの本を見るまで何もわかっていませんでした。私には、手始めにSG-1000のことを知ることが、レトロゲーの世界に存在する多様なゲーム機を理解する最初の足がかりとなりました。
その後、BK保存委員会はコミケを撤退し、Game Legend のみに活動を移しますが、その後もStand Up さんとの関係は、私がコミケでお客として行って続いていました。しかし、私は病により同人活動を休止し、ついにコミケにも行かなくなりました。

同人活動を休止しても、レトロゲーの勉強は進めていました。また、かつて買っていた本を読み返すことは、自分にとって癒される時間でもありました。Stand Up さんの本は、とても勉強になるし、何より読んでいて楽しくて好きでした。この休止期間中もひたすら読みました。そして、転機は訪れます。四街道でゲーセン仲間ができたことで、その仲間と共に、ついにGame Legend復帰を果たします。初めはお客として行って、それからサークルとして復活を果たしました。そして2014年、BK保存委員会は分析型ゲームレビュー、ゲーマー魂を出します。

Game Legend に復帰したとはいえ、少々の疑問がありました。まず、BK保存委員会はBKIIの魅力を伝えるべく始まりましたが、その任務は攻略本により完結させ、今でも攻略本を売り続けることでコンセプトを受け継いでいます。その後、Thunder Force IVの攻略、初代BKの攻略、熱血と組んで鉄拳のコンボ映像を作りますが、それはゲームの面白さを伝えるためのもので、サークルとして攻略を仕事のように続けていくことに疑問を感じました。また、Stand Up さんのやっていたような、読み手が楽しく読めて、しっかりゲームを吟味している良質なゲームレビューが、Game Legendには足りないと思いました。私としては、常夏倶楽部Gのくりんさんが出している本がかなりよいと思っていますが、それはレビューとして個性があったからでした。書き手の顔が見えるようなレビュー、読み手が楽しめるレビューが足りない、そう思っていたのです。そして、いつか自分もそんなレビューをしたいと考え、2014年からゲーマー魂を出すことになりました。
このころには、Stand Up さんから買ったりいただいたりした本は、色が変わるくらい読み込まれていました。知識を増やすため、本の内容を記憶するために読み込んだのもありますが、レビューとしての楽しさとは何なのか、考えるために読みました。運がよかったのだと思いますが、私は最初からかなり良質なレビューと出会えていたと思います。この世界に飛び込んでから同人誌を買いあさりましたが、せいりゅ先輩の書く本は、あらゆる面でしっかりしていて、秀でた存在でした。それと、常夏倶楽部Gのくりんさんの本です。私はこの良質なレビューのいいとこ取りをする形でゲーマー魂を書くことにしました。

ゲーマー魂第2号で、私は行き詰ります。論旨の方向性が定まらず、内容がただの批判になっていました。題材は「ポパイの英語遊び」と「ドンキーコングJr.の算数遊び」です。こんなとき、活路を与えてくれたのが、せいりゅ先輩の本でした。SC-3000用の学習ソフトのレビューがあり、そこからセガのやり方と任天堂のやり方を比較するという視点が生まれ、本が完成しました。第2号は、せいりゅ先輩の本がなければ存在しない内容になっています。
そんなころ、Twitterで偶然に流れてきたものを見ました。「コミケ戦士の鑑」と書かれた、NHKのドキュメント72時間のキャプチャつきツイートです。すでに10000RTを越えていました。その番組でコミケの特集をしたのは知っていましたが、テレビは見ていませんでした。私は見て驚き、思わずコメントを入れてしまいました。「うそ、せいりゅさんじゃないか ! まだ活動を続けているんだ、よかった !!」本も映っていましたが、私は顔を見てわかりました。
コミケに行かなくなり、すっかりせいりゅ先輩とは離れてしまいました。しかし、同人活動を続けていることを知ったのです。まさに、ゲーマー魂第2号を書いているさなかでした。コミケで隣り合い、SG-1000を知ることが、私に新しい世界を教えてくれました。時が経ち、その本のよさをあらためて知り、その影響で今度は自分が本を書くことになっていました。そして、せいりゅ先輩の本がなければ書けない内容の本を書いていました。私は、今までのことをお礼したいけど、もう同人やってないのかなと思っていましたが、元気であることを知りました。それはそれは、胸が熱くなりました。Twitterでもせいりゅ先輩のアカウントを発見しました。相変わらずアイマス一直線でしたが、元気そうでした。
活動しているなら、お礼をして本を渡すしかない、そう思い、昨年末の冬コミでサークル参加しているか調べましたが、参加しておらず、この夏にかけていました。せいりゅ先輩のTwitterを見ると、ちゃんとコミケのサークルスペースが入っているじゃないですか。この夏、二日目のコミケに行ったのは、このためです。本を渡し、創造の機会をくださったことにお礼をすること。

コミケで会ったとき、こちらのTwitterも見ていたためか、私のことがわかってくださいました。名乗ってもいないのに、わかってくださいました。ええ、名乗りませんでしたがBK保存委員会の杏樹草子こときしもとまさきです。そうです、コミケで隣り合ったあのアホやっていたサークルです。本のことを話し、レビューが素晴らしいことを話し、せいりゅ先輩の本がきっかけで私もレビューを書き始めたことや、そうした関係がなければ私がこんなことを今していないと、創造の関係のつながりのありがたさを伝えました。先輩はわかってくださいました。そしておっしゃいました。私が本を書けたのに、先輩の本があったからなのなら、先輩が本を書けるのはSG-1000というものがあったから。大好きなものを作ってもらえたからこそ、今の自分がある。そして、せいりゅ先輩の本が私の本を書くきっかけになれたのなら、そんなに嬉しいことはないと。
そうだ、思えば私も最初は、ベアがなければこんなことをしていなかったんだ。創造の連鎖です。誰かの作ったものが、誰かの創造性を刺激する。それが繰り返され、ものができていく。きっかけはどんなところからくるのかわかりません。
感謝はされるとうれしいものですが、感謝できることもまたうれしいものです。ありがとうと言いたい人に、ありがとうと言えること。この夏コミは、それが実現できて、本当に充実したコミケになりました。

私はこれからもゲーマー魂を書いていきます。第3号でも、再びせいりゅ先輩の力を借ります。SG-1000のゲームのことも話に出します。実は、ゲーマー魂では先輩から受けついたものを越えようとする仕様がひとつだけあります。コピー本ではなく、印刷所の印刷で出して作ることです。別にコピー本が悪いと言っているのではありません。私は金にうるさいので、本を赤字で売ろうなどと思いません。そのため、ゲーマー魂は400円と、値段が高いです。それでも、ぱっと見のインパクトのよさがあり、内容を伴えば、確実にファンがついてくれるだろうと思っています。要は400円分の読む価値がついてくれば、誰も文句は言わないだろうと思うのです。現状では確実性を保証できませんが、40冊くらいならさばけるようです。レビューとしては十分だと思います。その分、手抜きはできません。締め切りやお金の面など、やることも多いですが、先輩たちのやってきたことに自分の要素を加えていき、印刷所に出しても耐えうる内容にすることで、自分に責任を嫁しています。これには他にも理由がありまして、昔絵師として本を出していたとき、コピー本を作ったのですが、買う人にこれをコピー本はありえない、印刷所でちゃんと出せと激を飛ばされたことがあります。悲しいやらうれしいやらで、印刷所で出すことを質的目標に掲げました。

最後に、人とのつながりが何を生むかは未知数です。私も、あの時の出会いが様々に影響してくるとは思ってもみませんでした。せいりゅ先輩の言葉を借りますと、「作り手の好き」と「受け手の好き」が受け止め合える、そこも含めて「表現のキャッチボール」、それがあることが本を作る理由になると言います。私は何を考えているんでしょう。こんないいこと言えないな。私が本を作る理由・・・自分の考え方を世に投じることで、視点の多様性を感じ取ってほしいから、かな。そこから論議を深めるきっかけになってほしいからかな。どっちかというと、学者ですかね・・・。ベアについては違いますね。この世にこんな面白いゲームが存在していたことを知ってもらい、新たにプレイするきっかけを作りたい、かつて遊んでいた人も、ゲームの奥深さを知って、またプレイしてもらいたい。実直だけど、これもまた大事なことだと思います。